2014年10月19日

うまくいっても、うまくいかなくても。

先日、フィラデルフィアで米国東部支部のお茶会があり、私の所属する社中(師匠とその弟子おグループ)が当番でした。私は「濃い茶席」の亭主(お茶をたてる人)という大役をおおせつかりました。仲間内はともかく、外の人たちとの場では、薄茶席の亭主の経験はあるんだけど、濃い茶席は初めてで、「うわあ、まじ?(汗、汗)」って感じ。

土曜日の朝まだ暗い中4時に起きて着物を着てマンハッタンの師匠宅まで出て行き、そこから兄弟子の車に載せてもらってフィラデルフィアまで行きました。ドアtoドアで5時間ほどの道のり。夜の帰りも遅かったので、その日は子供ともほとんど顔を会わせず(夫が子守り担当)。はっきりいって大騒動(苦笑)。なんで「ただの趣味」にここまでするのかよく分からんし^^;;、と思いつつ、とにかく行ったのであります。

10月の間だけ行う「中置き」と呼ばれる茶室の設営でお手前が普段と少し違う&練習不足もあるので、不安〜。間違えやすいポイントをおさらいしつつ、軸や茶入れやお茶杓についての知識を車で兄弟子と一緒に暗唱しつつ(茶会のお客さんとのやりとりで答えないといけないので。ほとんど受験勉強。笑)フィラデルフィア到着。

で、結果として、おさらいしたポイントはなんとか乗り切ったけど、チョウ基本的なところで大間違いをしてしまいました。(案の定〜〜??)間違いに気がついた時「うっひゃ〜」と心の中で叫んだけど、知らんぷりして(てか、完璧にバレてたと思うけど。失笑)続けました。さらに、お客さんの一人が、緊張されていたのか手元が狂って、茶碗になみなみと注がれたお濃い茶を私の「出し袱紗」(お濃い茶を飲むときに使う絹の布地で、亭主のものを最初に提供する。結構、高価なものです。涙。)に、どばっと、こぼしてしまった・・・というハプニングもありつつ、とにかく無事終了。

帰りの車中は師匠と一緒でした。
そこで師匠が私におっしゃるには、

「どう?やってみて、自信ついたでしょ?」

・・・。

・・・いやいや自信っていうか・・・。

むしろ自信喪失かも?と思いつつ、でも、「う〜ん、失敗しちゃいましたけど、良い経験になりました。」とこれもまた本心なのですが、あたりさわりなく答えた私。

その私に対して、師匠はなんのてらいもためらいもなく、きっぱりと、言い放ったのです。

「うまくいっても、うまくいかなくても、自信になるのよ」

と。

聞き慣れない言い回しでした。初めて聞いた言い回しでした。だから「え?」という感じの違和感が聞いた瞬間にあって、私は少しの間、その師匠の言葉と自分の中で向き合いました。「うまくいかなくても自信になる?それ、どういうこと?きみ<=その言葉そのもののこと;断じて師匠のことではありません^^;;>、何者?」みたいな感じで。

「失敗は成功のもと」とも言いますし、私が師匠に回答した「う〜ん、失敗しちゃったけど、良い経験になりました」は、よくある考え方/言い方だと思うんですよね。そして本当だと思う。次(の成功)に(いつか)つながる、っていうことですよね。

でも、成功体験が自信につながるのというならともかく、失敗体験がそのまま自信につながるっていうのは、聞いたことないよなあ。だけど、数多くの茶会をこなしてきて、きっとその間には師匠といえでも失敗することも数多くあったのだろう、と想像すれば、その師匠に言葉はきっと真実なのだろう、とまだよくわかんないままに、私は思ったのです。

だから、しばらく、この師匠の言葉を「問い」として自分の中で持ちつつ日々を過ごしました。

そして、師匠の意図が理解できたかどうかは定かではないのですが、私なりに、こういうことかな〜?と感じたことがいくつかありました。

まずは、「うまくいっても、うまくいかなくても」、それはやはり経験値を高める、ということ。言い換えると、場数を踏むということの大切さ、とでも言うのでしょうか。うまくいかなかったとしたら、それは経験のバラエティを増やすということだし、次になにかがうまくいかなかったときの対処法の引き出しが増えるということ、でもある。イコール、自信につながる。

ということ、なんじゃなかろうか。

次に腹が(より)すわる、ということ。あ〜んな失敗しても、知らんぷりできたし(苦笑)とにもかくにも無事に終えたんだから、なんちゅうか、きっと次も(たとえ失敗しても)なんとかなるんだろう、と思えるようになること。It is not the end of the world って、テストが悪くて落ち込んだり発表の前に緊張したりする学生に今でも言うことがあるのですが。

そういうこと、なんじゃなかろうか。

そして、基本的にオメデタイ私は思ったのです。
だったら、やった方がいいじゃん。うまくいっても、うまくいかなくても、自信になるなら、やるにこしたことないじゃん、って。
成功するか失敗するかじゃない。どっちでもいいんだ。
やってみること、それこそが、一番大事。(いや、だからといって、毎回失敗して良いとは言ってませんが^^;;)

経験してこそ、自信がつく。
うまくいっても、うまくいかなくても。

そう考えると、お茶以外のことでも、ちょっと“びびる”ことに立ち向かう上での「勇気プラスお気楽さ」のようなものが、自分の中に湧いてくるような気がしました。(特に10月の後半は、私としてはちょっと緊張する大きなイベントが仕事の上で控えていて・・・実はびびってます^^;;)

一方で、あんなに失敗したから、うまくいかなかったから、もう2度とやりたくない、って思う場合はどうなんだろう?そういうケースもあるんじゃないかな?とは思います。そしてここでさらに思ったのは、それって、「その道」をもうやめてもいい、やめたい、って思う場合だよね、って。

だったら、やめたらいいと思う。

きっとその「うまくいかなかった」体験は、試金石だから。

その失敗で「もう嫌だ。もうやめたい」と思うなら、それは、やっぱりやめていいんだと思う。
あるいは、やめた方がいいんだと思う。

実際、私もあったんですよね。
まるではかったようにすべてのタイミングやらなんやらが捨てて合わなくて「うまくいかなかった」ことが。
で、少し落ち込んだけど、その後ふとしたときに感じたのは「あれ、てか、私、もともと、こっちじゃなかったんじゃないの?」ってことでした。(ただこの感覚を「となりのぶどうは酸っぱい」的なものと混同しないように見極めることは大事ですよね。)
なんか人に言われるままに、「そ、そうかな?」なんて思って、やってみたけど、実はどっかしっくりきてなかった、ってことに、気がついた。後で。
それで、「いや、私、やっぱりこっちだよね〜」って、舵を別の方向に向けて、結果的にうまくいった、ってことが、ありました。

でも、「その道」を歩き続けようと決めているのならば、きっと、うまくいかなくても、「やりたい」気持ちは消えない。
「その道」を歩く覚悟ができているのならば、うまくいっても、うまくいかなくても、やった方がいい。経験したほうがいい。失敗は成功の母だから、ということだけではなくて、その失敗そのものが経験値となり、自信の源となるのだから。

そして「その道」を歩き続けようと決めているのならば、その覚悟ができているのならば、きっと、きっと、うまくいっても、うまくいかなくても、「やめられない」ものなのだと思う。やめたくても、ね。

(ここでちょっと、大学院留学時代の自分を思い出して、あ〜そうか〜、と嘆息とともに納得した。あんなに全てが“どんづまり”だったのに^^;;、私は「やめられなかった」な、と・・・・)

まあ、これが趣味ならともかく、日々の糧を稼ぐ仕事だったらまた違うんじゃない?という声も聞こえてきそうな気がするんですが・・・でも、実は、趣味だろうと、仕事だろうと、そんなに変わらないんじゃないかな〜、とも感じております。


そしてたとえ何かの理由で「その道」をやめなければいかなくなったとしても、「やって、だめだった」と言えるまで、やってみる、ってことは、すごく大事なんじゃないかな、と思う。


だから、やっぱり、「うまくいっても、うまくいかなくても」、やるっきゃない、やり続けるしかない。
そして、もしもあなたがそういうものに、うまくいっても、うまくいかなくても、やりたい&やめられないことに出逢えているのなら、それって素晴らしいことだと思う。

うまくいっても、うまくいかなくても。

それは「自信」になる。
その経験そのものが。


たとえいつの日か、その道をもう歩かない、という決意を下すことがあるとしても。






posted by coach_izumi at 06:24| Food for Thoughtー感じたこと思ったこと