熊本大学で行った3つのレゴ・ワークショップのうち、ふたつは熊本大学の拠点研究の一つである『紛争解決学・合意形成学の拠点形成』主催の一般公開ワークショップとして実施されました。ワークショップのタイトルは「レゴ・シリアス・プレイで問題解決の端緒をつかむ」というものでした。
熊本大学の大学院社会文化科学研究科には「交渉紛争解決・組織経営専門職コース」というものがあって、そこでは組織や地域における紛争解決・合意形成・組織/地域変革のプロを養成しています。今回そこのコース長である石原明子先生という方がレゴ・シリアス・プレイ・メソッドが面白そうだから大学院の学生さんや一般の方たちにも紹介してみたいと言ってくださって、色々とアレンジをしてくださいました。
もと同僚でもある石原先生はワークショップ当日は以前から決まっていた出張のために同席していただけなかったのですが、そのかわりに大学院の学生や事務の方を通じて全て手配していってくれました。私も10年間も働いた「勝手知ったる」職場ということで、心配はしておりませんでしたが、それでも色々と前もって全てアレンジしていただいたのはとても助かったのでした。
ワークショップの主催者であるその先生の冒頭の挨拶でワークショップ開始、というのが本来の流れであるということで、なんとその石原先生は「挨拶文」を残していってくださったのです。ワークショップのお手伝いをしてくれた大学院生さん(中国からの留学生さん)が読み上げてくれた配布文章があるのですが、今回のワークショップの狙いや性質というものが分かると思うので、一部以下に抜粋します。
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紛争解決学では、「対立や葛藤や問題には、未来がより良くなっていくための重要なチャンスと知恵がつまっている」と考えます。対立や葛藤や問題から出発して、より良い未来に変化していくために大切なものの一つが創造性で、そのために、アート(工作や創作活動)は紛争解決や問題解決でも、多用されます。
本日はその一つの方法として、船山先生による『レゴ・シリアス・プレイ』の入門をお楽しみいただけましたら幸いです。
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今回のワークショップについてアメリカー日本でスカイプミーティングをした時に石原先生と、どのようなお題目でレゴのモデルを作ってもらおうか、ワークショップの最終プロダクトはどのようなものにしようか、などなどについて、(お互い懐かしいので近況報告のおしゃべりに花を咲かせつつも。笑)活発に話し合いました。そして、「現在参加者が抱えている葛藤や問題についての現況」「解決した状況」について、レゴブロックでもモデル作り、語り、そのふたつのモデルを統合し、現況−解決した状況へとつながるストーリーを作り、語る、といった段取りで進行することになりました。
こういうテーマでワークショップを行ったことはなかったので「うまくいくかな?」と少しどきどきしていましたが、実際にやってみると、私としては予想以上のものが生まれて出てきた、という感覚でした。
それぞれの人が抱えている葛藤や問題。それがたった数時間のワークショップで解決するわけもないし、具体的な解決策が決まる、ということでもありません。ただ、参加者の多くが言ってくれたように、それまで「もやもや」としていた「嫌な状態」が果たしてそもそもどのようなことなのか、ということを自分の手をつかって「カタチ」にするということは、解決への道筋の必要不可欠かつ重要な第一歩となります。葛藤や問題があるとき、果たして「何が」「どう」問題なのか、ということについて実は明確ではない場合が多いからです。そして「解決した状態」をレゴブロックで作りそれについて語るというプロセスを通して、まず「実は自分が望んでいる“解決状態”とはこういうものだったのだ」ということが明確になると同時に(モデルを作る前にぼんやりと想像していた「解決した状態」と、モデルを作った後に“カタチとして見えてきた”「解決した状態」ことが、必ずしも同じようなこととは限らないのです。)、「カタチ」として作り出せる&見える=実現可能である、という思考・見方につながっていきます。さらに「現況」と「解決した状態」が「つながる」カタチを作ることによって、「こういう風に行けばいいのか」といった、道過じやヒントが見えてくる、まさしく「問題解決の端緒をつかむことが可能となります。
それが新しい発見である場合もあれば、確認あるいは確信へとつながる場合もありますし、今までなんとなく「こうじゃないかな」と思っていたこととはむしろ相反することであったりもします。今回のワークショップに参加してくださった方たちの中にも、色々なパターンがありました。
そしてそういった「解決実現」の思考・見方をまず最初に有することによって、(ワークショップのあとということになりますが)、「解決実現」のための具体的な行動や手段をとる、という段階へと進むことが可能になるのです。
どういったことが「解決の端緒」となり得るかというのは、本当にケース・バイ・ケース、参加者や彼らにとっての「葛藤」や「問題」によって様々だなあ、ということも実感したのですが、そのバラエティの例示として、参加者の方の発言を以下数例挙げると(詳細は少し変えています);
「こうしてカタチになったのを見ることで、“自分にはできるんだ”という自信になった」
「やっぱりこうなるのが一番良いのだということがあらためて分かった」
「問題だと思っていたことが実は問題じゃなかったということが分かった」
「どちらの道を行けば良いのか悩んでいたけれど、結局どちらの道を行ってもたどりつきたい望んでいる結果につながるのだということが分かった。」
「すっきりして安心した」
「自分はあせっていたんだなと思った」
「あっちかこっちかと思っていたけど、両方必要で大切だということが分かった」
「やり方を変えないといけないと思っていたけど、今のやり方をもっと極める方向で行きたいと思っているということ分かった」
などなどです。
毎回毎回思う、そしてこうして言葉にしているのですが、参加者の方の洞察と創造性にはいつも驚きます。正直に言って、ワークショップの前はいつもちょっと不安なのですが(特に今回のように初めてのお題目だったりすると!)いつもワークショップのかなり最初の方でその不安は吹き飛び、ワークショップのなかば〜最後にかけては、一人心の中で密かに感動しています。「へ〜、そういうのが、出てきたんだ〜」と、「へ〜」ボタンを連打したい気持ちになります。人間が手で思考するって、すごいな。そして、やっぱりこのメソッド(=レゴ・シリアス・プレイ・メソッド)、パワフルだな〜・・・・って、思わなかったこと、今まで一度もないです。
2014年06月15日
『紛争解決学・合意形成学の拠点形成』主催ワークショップ
posted by coach_izumi at 09:53| Workshopsーワークショップ