日本帰国第5日目と6日目の週末は、大分県・別府にあるAPU(Asia Pacific University、立命館アジア太平洋大学)にてレゴ・シリアス・プレイ・メソッドを使ったワークショップを学生さんたちに向けて行いました。土曜日と日曜日それぞれ一回づつの計2回、今回は一回4時間かけ、使用するブロックも大量のブロックを使って行いました。昨年マンハッタンで行ったものと似た構成で、でもテーマやサブ・テーマを変えてデザインしました。
今回のワークショップは、APUの教育開発学習支援センターの准教授である筒井久美子先生と昨年から共同で行っている研究の一部として行ったもので、文部科学省が支援しているグローバル人材育成プロジェクトの一環でもあります。今回のワークショップそのものは、APUから学内助成金をいただいて実施しました(つまり通常の予算とは別枠で申請して学内審査を経て獲得した研究費ということです)。
だから、今回のワークショップは学生さんたちに貢献する、という意味合いはもちろんあるのですが、それよりはむしろワークショップに参加する学生さんたちに研究協力をしていただく、という形をとって行いました。
筒井先生と行っている研究は「グローバル人材育成における内発的動機付け(の重要性)」に関するものなのですが、今回助成金をいただいたのは論文執筆や将来的にAPU学外からの研究費獲得を目指すということが前提ですので、ワークショップの前後には参加者の学生さんたちに対して調査やインタビューを行います。学生さんたちの許可をいただいて(ちゃんと書面に署名してもらいます)、ワークショップの様子をすべてビデオ撮影しました。・・・てことで、久々の「研究者モード」。読み返すと、上記既述も、なんかカタい感じ(笑)。
ではあるのですが、ワークショップ自体は、そういうこととは関係なく、いかに参加者である学生さんたちに豊かで意義ある時間を過ごしてもらえるか、そしていかに彼ら(の人生)に貢献できるか、ということが何よりも大事。一回一回のワークショップが一期一会であるということを肝に銘じて、でも私自身が楽しむことを忘れずに、ファシリテートしました〜〜。
筒井先生と私は、昨今やたらと取りざたされている感のある「グローバル人材」という言葉と概念に違和感があって、特にお役所の文章に書かれているようなちょっと“ご大層”な感じの「グローバル人材」像に対して「グローバル人材って、みんながみんな、そんなに“立派”である必要ないんじゃないの?」という疑問を持っていました。そして「グローバル人材教育」イコール「英語教育(のみ)」という傾向にも疑問を持っていました。
私たち自身も留学経験があり英語を使って仕事をしてきたということでは、いわゆる「グローバル人材」の末席にいるのかもしれませんが、「いや、あの、若い頃、そんなリッパなこと考えて留学したわけじゃないんですよ・・・・^^;;」というのが正直なところ。お役所の文章に書かれているような「グローバル人材」像は、この歳になっている私たちから見ても、まるで「雲の上にいるような」人にしか見えません。
そんなもんを今時の学生に対して「さあ、こうなりなさい!」ってオトナが押し付けても、どうなんでしょ(うまくいかないでしょ?)。むしろ、そういった「立派な型」に押しつぶされたり翻弄されたり、っていう場合の方が多いんではなかろうか(これは普段学生と接している筒井先生が強く感じていることでもあります)?そりゃ、そういうのがしっくりくる学生も多いけど、そういう学生は逆に一人でどんどんやっていけるから、ほっておいてもいいんですよね。むしろそうじゃないけど、でも、自分の中に「グローバル人材」としての「種」を持っていてその種をどういうふうに育てていけばいいのか分からない、いわばグローバル人材育成の世界ではエリートとは言えない学生。そんな彼らが自分の好きなことや強みについての明確な自己認識を持つことを通して、「自分は」どんなグローバル人材になりたいか、といういわば自分仕様のヴィジョンを持つことができたら・・・(がんばろうという気持ちが内から湧き出ててきて学校のおべんきょうにも励み結果として英語の成績も上がるのではないか。なによりも、彼ら自身が充実した学生生活を送る一助になるのではないか。)そんな願いと仮説が、今回の研究&ワークショップ実施のきっかけでした。
実験的に、という意味もあり、土曜日と日曜日では若干ワークショップのデザインを変えてみましたが、共通しているのは学生さんたちが「自分が時間を忘れるほど好きなこと・夢中になること」をレゴで作り語りそれを「グローバル人材としての自分の将来像」のモデルを作り語るというプロセスに取り込んだことです。(このとき、レゴブロックで作ったモデルやそのピースの一部を、文字通りくっつけます。)
また、ワークショップの最後の方では「グローバル人材として今の自分」も作って語って、そのモデルと将来像をつなげることによって「現状→将来」へのストーリーを構築していったのですが、その際コーチングの手法を取り入れました。現状→将来へと道をつなぐ上で、今の自分の(モデル)のなかでさまたげ(あるいは欠けている)となっている「レゴブロック」のピースについて学生一人一人に、この(欠けている)ピースは、現在の自分の生活の中で何を指すのか問いかけました。すぐに回答が出てきた学生さんもいましたが、う〜んと考えこんだ学生さんもいました。すぐに回答が出てきた学生さんに対しては、では、そのことについて今日からとりくんでみませんか、という提案と、すぐに回答が見つかれなかった学生さんに対しては、それについて考えてみることを課題として持ち帰ってください、というように言いました。
みな、こちらがちょっとびっくりするほど、何かをかみしめるようにうなづいていました。
熊本大学でワークショップをしたときにも同じようなことを感じましたが、普段教員に対して(特に授業中^^;;)は、自分の考えや思いをそれほど多く語らない学生さんたちですが、このワークショップではみな私たちが驚くほど、「自分」を出してくれていたように思います。そしてそのことは参加者の学生さんたち自身も感想を述べる時に言ってくれていました。筒井先生の言葉を借りると「みんな、素晴らしいものを持っている」んですよね。
ワークショップのテーマうんぬんだけじゃなくて、そのことにも気がついてくれたんじゃないかな、あるいはそのきっかけがつくれたんじゃないかな、って自負してます。
ワークショップのあとは事後アンケートをとりました。さらに個別インタビューへと続きます。研究、論文執筆の道は長く険しい(笑)のですが、事後アンケートをざっとみた感じでは、今回のワークショップは、参加した学生さんたちに対して明らかにポジティブなインパクトがあったようです。
その詳細な検証も含めて、またアップデートしていきたいと思います。
2014年06月16日
APUワークショップ
posted by coach_izumi at 23:21| Workshopsーワークショップ