2014年03月14日

身体を使う

コーチングには、「ただ話をする」「ただ話を聴いてもらう」というイメージもあるようですが、実は「身体」を結構使います。

例えば仕事や人間関係がうまくいかいと感じて八方ふさがりのように感じるとき。

コーチは、その状態や状況を「説明」してもらうのではなく「感じて」もらうようにクライアントさんと促すことがあります。

アタマと言葉だけを使うのではなく、まさしく「カラダで分かる」ことは、とてもパワフルで効果があるからです。

そこで、今その状態や状況にあるのって、体感的にどんな感じですか、と尋ねたりします。そしてたとえば「押しつぶされている感じ」とか「真っ暗闇の中でうづくまっている感じ」などという回答が出て来たら、その感覚を再現してもらうのです。

何か(害にならない程度に)重いものを実際に持って来てもらって、持ってもらう、身体の上においてもらうとか。

夜なら電気を消してもらって真っ暗にしてもらって実際に「うづくまる」姿勢をとってもらうとか。昼間ならブランケットなどをかぶってもらって光を遮断してもらうとか。

実際に身体だけでなく時には小道具も使って、その感覚を再現してもらいます。

悪い感覚だけじゃなくて、「その夢が達成したことを想像すると、すごくわくわくしていて、はねまわりたい気分」なんてことが出てきたら、実際に立ち上げ合ってぴょんぴょうんとはねまわってもらいます。

つまり、その状態をコーチング・セッションの間に実際に「体験」してもらうのです。

そのプロセスについては詳述を割愛しますが、その疑似体験をしながらコーチの質問に答えてゆくことによって、アタマと言葉だけであれこれ悩んだり解決しようとしたりしていたことが、「分かる」ことがあります。

とても、高い頻度であります。


私たちはアタマでいろんなことを考えがちです。そしてアタマでもって何かを解決しようとします。

でも、私たちのリソース(資源)は、アタマだけじゃないんです。

「体が覚える」とか「体で分かる」とか言いますよね。

カラダは、ほんとうにリソースフル(resourceful=資源がいっぱい)。カラダは、「知ってるんです」よ。「分かってる」んです。そのことを、私たち本人が知らない。アタマに頼りすぎちゃってるから、カラダの知恵を忘れがちです。「カラダは分かってる」、ってことが分からなくなってしまう。(ま、私もなんですけどね^^;;。だから私自身もコーチング、受けてる訳ですが。)

だまされたと思って、カラダ、一緒に使ってみましょう。

・・・毛布かぶったり、ぴょんぴょん跳ねたり、ちょっと恥ずかしい?
大丈夫。コーチの私も一緒にするので^^



posted by coach_izumi at 23:46| Coaching Skillsーコーチングの技術

2014年03月13日

何でも使います

私もここで書いてきているようにコーチングにはきちんとした「スキル」がありますが、かと言ってすごく特別なツールを必要をするわけではありません。

むしろ、日常の中にあるものを適宜利用することがあります。

たとえば窓の外にいる小鳥。

以下、実際の行ったセッションに基づく例です(クライアントさん本人の許可を得ています。また、プライバシー保護のために、詳細を少し変えています。)。

ある大事な面接の前で、そのクライアントさんは少しナーバスになっていました。当たり前のことですよね。その面接のことについてセッションをする中で、私はちょっと「ん?なんか、足が地についてないような・・・」という気がしたので、ちょっと聞いてみました。

「あの〜、その面接でね、ほんとは何をしたいと思ってるの?」

そしてクライアントさんから出てきた言葉。それは「面接官に、すごい、って思われたい」でした。

分かる、分かる。あ、この人すごいじゃん、って思われて、それで面接に受かりたいよね。

でも、これってちょっと危険です。それは、

ひとつには、そのクライアントさんは
自分がどうありたいか、自分が何をしたいか、じゃなくて、人にどう思われたいか、ということに気がいってしまっているから。
もうひとつには、
自分の等身大を見てもらうんじゃなくて、それよりも大きく見せたい、っていう気持ちが見え隠れするから

です。

こういう気持ちで大事な面接に望むと、上滑り、空回り、してしまいがちです。分かるんだ〜。ちなみになんで分かるかっていうと、私自身にそういう部分があってそれで失敗する、という経験があるからです^^;;

こういう時「今、〜〜の状態になってますね(キケンでは?)」と、直接言うのもアリですが、その時は、なんとなくクライアントさん自身が自分で「腑に落ちる」ことが大事かな〜、と思ったように思います。

それで私は特に計画も目的もなく「あのね、ちょっと窓の外を見てみて」と言いました。

特に計画も目的もない。そうなんです。ちょっとコワいけど、クライアントさんの力を信じきれる状態に私自身があると、こういうこともできちゃうんです。
“どんなものからでも”クライアントさん自身がヒントや答えを見つけられるはずだ、と思えるときに。

私は続けました。「何が見える?」

クライアントさんは言いました「鳥。」

正確な一言一句を記憶しているわけではないのですが、以後の会話はこんな風に続きました。

「鳥ってどんな存在?」
「自由、ただ飛んでる」
「鳥は誰かにすごいって思われようとして飛んでる?」
「違う。鳥はただ、飛んでるだけ。特に目的とかないと思う。ただ、飛んでるだけ」

ま、鳥はえさを探して飛んでいたのかもしれませんが、鳥が本当に何で飛んでいるかは、この際、全く重要ではありません。

なにかの糸口をつかんだ気がする・・・と感じたので、私は続けてこのように問いました。

「あなたが鳥なら、どんな風に面接を受ける?」

クライアントさんは答えました。

「ただ、受ける。誰かに見せるためじゃなくて、ただ、受けます。」

そのクライアントさんに、面接のあと面接がどうだったか聞いてみました。すると、「うまくいったかどうか分からないけど、少なくとも変に緊張しませんでした。なんかいまいち盛り上がらないなあ〜、って思う時もあったんですけど、慌てたり取り繕ったりしないで、冷静にいられました。」というようなことをおっしゃってました。

これ、たまたま「鳥」だっただけです。別に空でも木でも隣のビルでも、なんでもいいんです。そして「鳥」がその時、まさに何かをお告げを運んでクライアントさんの前に現れたわけでもないんです(笑)。

なんでもいいんです。やらわらかな心と若干の想像力と創造力があれば、どのような事象の中にもクライアントさんは自分の姿(それがなりたい姿であれ、なりたくない姿であれ、今の自分そのものであれ)を見ます。まさに、自分で自分を見ることができるんです。

そうすれば、今の自分の状態がどうなのか、そしてそれをより良い状態にするにはどうしたらいいのか、が、ほぼ自然に自分で分かってしまいます。

誰しもそういう力はありますが、ただ、慣れ・不慣れや得意・不得意はあるんですね。こういうセッションの経験のあるなしも関係します。ただ、私はそのクライアントさんはそういう力のある人だということを、ある程度の期間を通して知っていたので、私自身がアジェンダを持つことなく、ただ「窓の外を見てください。何が見えますか」と質問することができました。

そこにたまたま鳥がいた。何よりも、それがクライアントさんの目にとまり、心をとらえた。だから「鳥」を使うんです。

もちろん「はずす」(笑)こともありますよ。でも、はずさないことの方が実は多いです。そしてはずしたらはずしたで、そこから、思いがけないことが生まれたりします。


じゃあ、コーチは何もしないんじゃない?それに「はずしてもイイ」って、なんかテキト〜、なんて思う方もいるかもしれません。

はい、実際、コーチは何もしないのがいいんです。クライアントさんが自分自身で見て聞いて感じて考えることができる時間と場を提供できるなら、それがベスト。

そして私は人の心が読めるわけではないので「はずす」こともあるんです。
でもそこで「あ、そうじゃなくて、〜〜です」という反応がクライアントさんが出てくること、結構な確率であります。そうしたら、まさに「はずした」甲斐があるというもの。

そして私がクライアントさんのことを理解できるかどうかって実はそんなに重要じゃないんです。

重要なことは、クライアントさんがクライアントさん自身を理解できるようになること、なんです。

そのために、コーチは何でも使います。

「はずす」ことも厭いません。というか、そのことすらも、何かの手がかりになります。


ただ、普段の生活の中ではなかなかこういう会話にはならないですよね。

コーチングという枠組みの中だからこそ、ただの「鳥」が、クライアントさんが自分自身を理解するための大事なツールになる可能性が、うんと高まるのです。














posted by coach_izumi at 23:35| Coaching Skillsーコーチングの技術

2014年03月04日

中断


「人の話をただ聴いてお金もらえるなんて、いい仕事だね〜」と言われたことあります^^;;

確かにコーチングの大きな部分は人様のお話を聴くことです。
でも、コーチは「ただ聴く」ということはしません。
コーチの「聴き方」は非常に能動的。
コーチとしてクライアントさんの話を「聴く」ためには、日常生活の中では使わない筋肉というか、高い集中力が必要です。

私はコーチングの前には瞑想などしてそれこそ「精神統一」(笑)的なことをしますし、一回のセッションが終わった後は、それは心地よい疲れであることが多いですが、「ぐったり」することが多々あります(笑)。

そんな「傾聴」はコーチングの基本中の基本。いろはの「い」ってやつです。

ただ、実は時にコーチはクライアントの話をあえて「中断」します。
そしてこれは重要なコーチング・スキルのひとつで、能動的に集中してクライアントさんのお話を「聴く」からこその、スキルです。


日常生活の会話の中にもあることだと思いますが、クライアントさんが、ポイントのない話をいつまでも繰り返してしまう、いわゆる「ぐるぐる」してしまう、という時があります。なにかにどんづまった時、にっちもさっちもいかないように感じる時、自分でも状況の整理がつかない時、どうしたいのかすら分からない時・・・などなど、色々なパターンがありますが、なんにせよ、迷路に迷い込んで出口のない感じ。

そういう時、「ただ聴く」ということは、その「ぐるぐる」にひたすらつきあってクライアントさんと一緒にいつまでもぐるぐるすることを招きがちです。

お友達同士でお話を「ただ聴く」のなら、それもまたよし、だと思いますが、まがりなりもお金をいただいてコーチングさせていただくからには、それではいかんのです。

今このクライアントさんは「ぐるぐる」する必要があるんだな、とある種の直感で感じるという場合は別として、コーチはこの「ぐるぐる」を断ち切ってクライアントさんがこの迷路から出て別の場所行く事ができるように誘います。
それが「中断」のスキルです。

「なんかぐるぐるしちゃってるから、ちょっとお話を中断させてください」なんてかなりダイレクトに中断して「で、ほんとにしたいことは何?」なんて感じの質問をすることもあります。

でももっとソフトな感じで「今までお話してくれたことを、ここで振り返るとどんな感じですか?」とか(これ、少し「俯瞰」のスキルが入ってますが)、「そういうすごく嫌な体験から、もし何か得ることがあったとしたら何でしょうね?」などと質問して、話の方向をちょっとずらす、なんてこともあります。
あと、「なんだかいつよりも話すスピードが早くなってますね〜」などと「反映」のスキルを使ってクライアントさんの「ぐるぐる」を「中断」することもあります。

するとクライアントさんは私の質問に応えようとして、つと止まって考えるので、「ぐるぐる」思考がいったん中断されます。「ぐるぐる」思考のパワーの源は「ぐるぐる」とした動きそのものなのだったりするので、一度「止まる」ことは効果があるのです。

中断されることによって、クライアントさんは、同じ状況に対してであっても、別の見方や感じ方を持つ事ができるようになって、そのことが迷路から出るきっかけとなったり、あるいは、迷路が迷路じゃなくなったりします。

なんか出口を探してあせってたなあ、ちょっと止まって作戦を練ってみよう、とか、ぐるぐる迷路をただ歩くんじゃなくて、この壁を壊してでちゃえば良いんだ、とか、いつまでも迷路を歩き続けないで、ジャンプして出ちゃおう、とか、穴を掘って出ちゃおう、とか、誰かに上からロープを下ろしてもらおう、とか、迷路の外にも聞こえるように大きな声で助けを呼ぼうとか。

あるいは、じゃあ、しばらくここで昼寝でもしようか、とか。この迷路(に見えた場所)でたき火をして他にも迷っている(と思えた)人たちを誘ってゆっくり話でもしようか、とか。


コーチングを始めたばかりの頃は、かなり直接的な「中断」にしろソフトな「中断」にしろ、クライアントさんのお話の「腰を折る」勇気がなかなか出ませんでした。

だからひたすら一生懸命クライアントさんのお話を「傾聴」しているのですが、「傾聴しちゃってます」という感じ。いわば「ただ聴く」状況に陥って、クライアントさんと一緒にいつまでもぐるぐるしてどこにもいかない・・・という失敗、ありました。

だって、ねえ。話を聴くのがお仕事なのに、そのお話を中断するなんて・・・自分だって話ているときに中断されたら嫌だし・・・


でも、その「恐れ」は実は自分のためなんです。「クライアントさんの気分を損ねたくないな〜・・・」みたいな。

何がクライアントさんにとって利益となるのか、を本当に考えることができれば、たとえそのときにクライアントさんの気分を損ねようがなんだろうが、コーチは腹を据えて「中断」するのです。もちろん、ケース・バイ・ケースで、時に注意深く、時に大胆に、ではありますが。

だから、クライアントさんが「えっっ」と思うような直接的な中断もあれば、クライアントさん自身が中断されていると気がつかないような中断もあります。

どちらの場合にせよ、肝要なのは、コーチが「自分が何をしているか分かってやっている」ということです。


そして、自分自身のクライアントとしての体験、コーチとしての体験を積んできて学んだことは、クライアント(さん)は実は「中断」して欲しいことが多いんです。ぐるぐる、したくないから、コーチング受けてるんだしね。

posted by coach_izumi at 23:52| Coaching Skillsーコーチングの技術